迷走する働き方改革
どこかのニュースのタイトルで「働き方改革はなぜ迷走するのか」というのを見たが「そんなのあたりまえやんけ!」と思う。
国会提出資料の不備なんてのは枝葉末節の問題だ。原因は安倍首相が根本的に認識不足なことだ。だから、裁量労働制(残業代ゼロ)法案で労働生産性が上がる、などと見当違いなことを言い出すのだ。
多分、彼に見えているこの世界は、我々庶民の見ているものとは相当違う。代々続く政治家一族の跡取りは、一言で言っておぼっちゃまなのだ。そのおぼっちゃまが持ってる情報は、わずかな社会経験と、支持者(大企業経営者)を通して入ってくるもの(あと産経新聞もあるかな?) だけなのだろう。そんな支持者に「日本は労働生産性が低いが、どうしたら良いのだろう」と聞くと「いやもう、働きもしないで残業代をとる奴がいてねー」と、経営者の目に付いたことだけが槍玉に上がる。だから残業代を出さなければそいつらは会社に残ったりしないで帰るだろう → 労働時間が減る、と予想するわけだ。
ここで、この予想に反する私自身の経験を話そう。
私はかなり前に裁量労働制になったのだが、それで今まで通りに早く帰ることを続けていたら、ある日、上司に呼ばれた。上司が話しづらそうに言うことには「形だけでももうちょっと残ってやって行ってくれないか」という。私の仕事が遅れてるわけではない。残業したとしても実になる作業にはならないだろう。
話をさらに聞いてみると、私の残業時間が平均より短いことが問題らしい。どうも、上司のさらに上司あたりから何か言われたらしい。それは、裁量労働制で残業をしてもしなくても同じだけ給料を出すのだから他の制限に引っかかるまで時間いっぱい働かせなければダメだろう、と言われたのかもしれないし、あるいは横並び意識、他の社員へのしめしから、労働時間が平均より少ない者にみなこのように言ってるのかもしれない。これで労働時間が減るなんて思えるか?
この例は私個人の経験だが、他の会社でも形を変えて何かしら似たような圧力がかかっている事は想像に難くない。
これから分かるように、裁量労働制になったとしても労働時間は減らない。増えるのが当たり前だ。「裁量労働制で労働時間が減る」なんて聞いたら「そんな馬鹿な」と思うのが普通の感覚だ。
そんなことを知らないおぼっちゃまは、裁量労働制が労働時間を減らすに違いないと迂闊(うかつ)にも信じ込んで、官僚に「そういうデータを出せ」なんて無茶を言うから、官僚はふてくされてデタラメなデータを持ってくるんだろう。
あれはもう「忖度」で自分から進んで作って出したデータのはずはないものね。どう見ても、無理難題を押し付けられたのを不満タラタラ捨てばちで作ったデータだもんね。データの作成方法だって、適当に選んだ経営者からの聞き取りだというのだから、相手を恣意的に選んだり、聞き取りの際に相手を誘導したりがあっても分からない。そんなことでもしないと、おぼっちゃま御所望のデータは作れなかったのだろう。
実の所、裁量労働制の効果についてはかなり前から注目されているのに、労働時間が減るなどということを裏付けるデータは制度の推進側からも出てきていない。いや、小規模なものならあるかもしれないが、世間一般で広くコンセンサスを得るような状況には全然なっていない。
そこを無視して自分の世界観で「そうなるはずだ」とデータを作らせるからこんな具合に迷走するのだ。
* * *
そもそも「残業代を無くしたら改革」なんて、改革を名乗るにはチトみみっちくないか?生産性の改革と言えるような過去の例と比べるなら、例えば今では当たり前になってるバーコード。あれが導入されたことで得られた生産性の向上と、比べられるような何かが残業代ゼロ法案にあるだろうか?
「あれは技術的なもので政府の所管ではない」というかもしれない。それが間違いだ。バーコードが普及するためには、バーコードの形式や中に書かれるデータの規格化など、政府の推進すべきものがたくさんあった。
今ならばAIはどうだ? AIを業務に活かすための法制だ。
AIを使ったことによる損失が発生してもメーカーを免責するような法律を作ったら、「責任」と言う言葉が大嫌いな経営者には泣いて喜ばれるだろう。
AIを活用したモデルケース(結果的に失敗でも構わない。ノウハウが得られれば)を政府推進で作ったら、これまた「挑戦」「失敗」という言葉が大嫌いな経営者が手を叩いて喜ぶだろう。
アメリカだったら企業経営者が自分の責任で挑戦して切り開いていくものを、日本では政府が手取り足取り、時には企業に代わってやってやるのだ。本当はそこら辺の意識改革こそ必要なのだが、改革される側を支持者にしている安倍首相には高望みでしかないな。
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