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2016年6月 3日 (金)

アベノミクスまとめ

アベノミクスは失敗だった、ということでもう良いのかな?
野党や識者も「アベノミクスの失敗を認めろ」と大っぴらに言ってるから、もう解禁だよね。
今まで野党や識者が正面切って言うのを控えていたのは、成功の可能性がちょっとでも残ってるうちに「アベノミクスはダメだ」と言うと世間的な気分が冷えて、わずかにあるかもしれない芽まで摘んでしまうからだったんだけど、黒田日銀総裁はギブアップしちゃったし、安倍首相も原因を外国のせいにしようとするくらいだから失敗だったこと自体は暗に認めてるんだよね。

次は今後が問題なんだけど、安倍首相は「アベノミクスをさらに進める」(意訳「まだ続けさせてください」)と言っている。しかし、「続けたい」のも意地とか体面で言ってるだけで、新しい知恵や打開策があるように見えない。多分、彼の支持者、支持層が変わらない限り、支持者(経団連、大企業)優先の政策、支持層の人間が持つ発想、そういったものから抜け出せないでしょう。

で、次を考えるために、アベノミクスの失敗要因をおさらいしてみる。

直接の原因は簡単で、一般消費者の消費意欲がちっとも上向かなかった事、一択でしょう。

なぜ消費意欲が上向かないのか。
安倍首相はアベノミクスの成果として「雇用が増えた、給与が上がった」と言ってるが、この数字が曲者(くせもの)で、雇用の内容を見ると増えたのは非正規雇用で、正社員はかえって減ってる。つまり、アベノミクスの間に正社員から非正規に落ちた人が多数いるということだ。非正規になって「さあ、将来は明るい。消費に金を回そう」という人はいないだろう。

なんでこんな食い違いがおきたのか。
そもそも雇用統計、給与統計が(表面上)良くなったのは、安倍首相の企業への働きかけがあったからだ。覚えている人も多いと思うが、安倍首相は就任直後に雇用と給与増を企業に呼びかけていた。そして意外にも、大企業を中心に首相の言葉に従って雇用、給与を増やす所が出てきたのだ。(まあ、おそらく労働者派遣法改正や円安誘導を約束するなどして、経団連を通して働きかけがあったのだろう。)
大企業は円安効果が出る前に将来の業績向上を先取りする形で雇用と給与増に動いたが、統計を詳しく見ると分かるようにそれは表面的なもので、非正規雇用で数を増やすと同時に正規雇用を減らしていた。安倍首相もその点を問題にする事はなかった。おそらく首相と企業の間の取り決めがそうなっていたのだろう。
その後、実際に円安効果で大企業の業績は上がったが、雇用と給与の実態はそのままだった。安倍首相はこの点にも相変わらず何も言わない。
大企業としては、為替操作(=円安)がずっと続けられないのは自明なので、そんな一時的な業績向上で雇用や給与を増やすわけにいかない。一度雇用した人をクビにしたり、一度上がった給与を下げるのは大変なのだ。また、円安をアテにした長期事業計画も同様だ。

かくして、外向けの表面的な数字の向上については大企業の協力を得られたものの、実態経済に関わる部分ではアベノミクスの限界を見透かされて様子見され、消費者にしても経済の実感が上向かない、むしろ非正規に落ちこむ人が増えるくらいだから、消費も増えない。
こうなった根底には「アベノミクス(為替操作や財政規律の無視)は長く続けられない。終わった後はどうなる?」という当然の疑問があったからだ。だから、大企業にしろ消費者にしろ、自分の財布を開く事に慎重だった。
安倍首相が、なぜ一時的な効果しかないカンフル剤で一気に景気を上向かせようとしたのかは分からない。(個人的には、彼の功名心や憲法改正の野心のためだろうと思っているが)
あの状況で、急攻策しかなかったわけではない。あまり騒がれなかった事だが、安倍首相の就任前に、日本の「失われた10年」とか「20年」と言われた長い不況がやっと終わって上昇に転じたことを経済指標は示していた。(これは、自民党でも経済に明るい人ならしぶしぶ認めている。)つまり、たとえアベノミクスがなかったとしても経済は徐々に良くなっていたのだ。だからこれを、表面的な景気刺激策でいじったりせずに、基礎体力をつけるようにゆっくり育てていくこともできた。そうなればその時々の経済の状況が日本の実力によるものだと企業も消費者も信じられ、安心して財布を開く事ができただろうに。

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コメント

アベノミクスの成果とされてるいろいろな統計の数字が、実態からはずれた見せかけのものであることは前からわかっていたが、最近の不正統計の報道を見て少し認識を改めないといけないことが分かった。
今まではそういった数字は、統計上の弱点というか盲点に力を入れて、企業の負担を増やさずに成果だけを効率よく上げている、と思っていたのだが、実際は統計の手法、基準、ルールまで変えていたのだな。いやはや、ここまでするとは思わなかった。

しかし前から思っていたのだが、安倍晋三は「失われたン十年」と言われるこの不況を甘く見ているのではなかろうか。こんな表面的な対策に終始するのも、彼がこの長期不況の原因を日本経済の構造的なものと思っていないからだろう。多分、「気分の問題だ、だから景気が良いと人々が錯覚すれば金が回って簡単に回復する」と思っているのではないか。だから、こんな人をだますようなやり口をするのだろう。
実際のところは、かつての日本経済の稼ぎ頭だった半導体や家電製品は中国や韓国にとっくに追い抜かれ、気分を変えたくらいでどうなるものでもないのに、それを直視しない。
だから、平気で国の科学技術予算を減らして、将来の産業のタネを枯らそうとするのだろう。
先日は「国の科学技術予算、初の4兆円越え」などとニュースになったが、これもまた数字遊びなんだろうくらいにしか思えない。基礎科学に予算が付かなくなったと、ノーベル賞受賞者を含めた多くの人が繰り返し言ってるのだから。
このままでは、たとえ武力で中国に勝てたとしても負けなのに、金をかけるところが違うのでは?

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